感想文:ジョブ理論

今回は、3年ほど前に大学院の授業で参考図書として紹介され、イノベーションやビジネスについて感銘を受けたというか、理解が深まった書籍の感想文です。相変わらず、本の内容についてはあまり触れず、この本を読んで感じたことや実践していることなどを書いていきます。

「ジョブ理論」は2017年に日本語訳の初版が発売されたクレイトン・M・クリステンセン他3名の共著です。現代社会では会社の規模や業種に関わらず、予測不能な未来を勝ち残る経営の切り札としてイノベーションが大きな注目を浴び研究されています。内閣府も2007年に日本の発展にはイノベーションが欠かせないとして、具体的に20の事例を挙げて推進してきました。

こんな社会環境なので、イノベーションの重要性とか必要性はなんとなく分かってはいましたが、普通の会社勤めをしていた私には無縁なものとしてまったく興味を示してはいませんでした。例えば、スマートフォンの登場で自分の生活は劇的に変わったので、それに続くイノベーションが起きて同じように生活がもっと楽になり楽しくなる、なんてことを期待はしますが、自分が起こすことは想像もできません。そもそも、どうやったらイノベーションが起きるのか、なんてことを考えたことも学ぼうと思ったこともありませんでした。

これが大学院の授業で体系的にビジネスを学び、論理的に商品が売れるまでの流れを聴くと、自分でもイノベーションとまではいかないまでも、ヒット商品を発想してみたいと思うようになりました。大学院では経営を専攻していたため修士論文も自分で考えたビジネスプランについて作成するつもりでいたので、どうせ論文を書くなら教授陣も納得するようなヒットするビジネスを、、、と欲をかいていました。

でも、これまでイノベーションの「イ」の字も知らない素人が、何から始めればいいのか、何を学べばいいのかまったく分からず、とりあえず参考図書として挙げられていた「ジョブ理論」を読んでみました。他にも多数あるイノベーションに関する書籍の中で、何故これを手に取ったのか?、、、単に古本屋に並んでいたからで、大きな期待を持って読み始めたわけではありませんでした。こんな期待薄が良かったのか、想像以上の感銘を受け久しぶりに「目から鱗」を体感しました。

まず、イノベーションを生むには市場やデータを解析することではなく、顧客を分析することである、とした着想にとても興味を持ち、これならデータ分析が専門ではない自分にも研究できるかも、と思わせてくれました。本の冒頭にファストフード店がミルクシェイクの売上拡大を目指すために何をするのかを検討するくだりがあるのですが、通常はシェイクの『どんな点を改良するのか?味、量、値段?』などを見直して、ストロベリー味を追加すると言った結論になるのが一般的です。これを『何故、顧客はこの商品を雇ったのか?』という観点から消費者の行動を考察することから改善点を導くという手法が語られています。つまり、このシェイクを買った動機を知ることから始めるというものです。朝の自動車通勤中に口寂しさを解消するためにシェイクを雇った人には溶けにくい改良が喜ばれるし、日曜の夕方に子供と一緒に来店して子供にやさしいパパを見せたい父親にはお腹が膨れて晩御飯を食べられなくならない程度のハーフサイズを用意するなど、顧客によって改良方法は異なります。こんな人たちにストロベリー味を追加してもミルク味がストロベリー味に替わるだけで売上は増えません。これまで顧客じゃなかった人たちに自社の商品を「雇ってもらう」ためには、今の顧客が「何故、自社の商品を雇っているのか」を知り、同じような問題を抱える人たちに解決策として自社の商品を伝えることが有効になる、と伝えています。

結局、成功したビジネスは「お金を払ってでも解決したい問題」に気付き、それを解決する手段を思いつき、その手段が多くの人が買える状態にすること、、、これができれば成功する確率はかなり上がるようです。

今は、これなら自分にも!と前向きな気持ちになり、FIREな生活を送りながらもビジネスの種について色々考えています。この本の影響で、今の生活に十分満足したら、そのうちビジネスをやってみたくなるような気がしています。