感想文:セールスコピー大全

最近、ネット販売やそれに関連しそうな本を数冊買って読みました。その中でセールスコピーライターの大橋一慶さんが書いた「セールスコピー大全(ぱる出版)」がとても興味深く勉強になりました。今回も、書籍の内容紹介というより個人的な感想を書いていきます。

そもそも、なぜネット販売に関する書籍を買い漁ったのか、、、ですが、商工会から南あわじ市の会員向けにデジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation(以下、DX)についてのセミナーをやって欲しい、と依頼されたのがきっかけです。ただ、一般的に言われている「組織やビジネスモデルをデジタル化によって変化させる」なんて言うのは、中小企業や個人事業主にとっては???だと思うし、こんなことを喋っても誰も感心を持ってくれないと思います。そこで、本来の意味でのDXとは違いますが、まずはデジタル化は難しくない、儲かる、などを知ってもらうために「ネット販売」をテーマにして、書籍を買い込みました。

で、たまたま買った「セールスコピー大全」ですが、眼から鱗なことがいっぱいでした。

私も広告は毎日見ています。その中で目に留まるものとスルーするものの違い、、、これをセールスコピーの視点から解説してくれています。冒頭で「お客さんはベネフィットにお金を払う」とあり、もの凄く納得しました。確かに、「高級羽毛をふんだんに使ったダウンジャケット」と書かれた商品だと『へ~、いいものなんだろうねぇ』と感心はしますが、買いたい衝動は起きないかもしれません。でも、「真冬に散歩がしたくなる!高級羽毛をふんだんに使ったダウンジャケット」と書かれていたら、散歩好きな私としては少し惹かれて続きが読みたくなってきます。

実はこれ、マーケティングの授業などでは一番最初に習うことで、「顧客はドリルが欲しいのではない。1/4インチの穴が欲しいのだ」などと教えられます。つまり、穴さえあけば道具はドリルじゃなくてもいい、ってことで、売るのは”ドリル”じゃなく”綺麗な穴があけられます”という結果なんだと、、、セールスコピーにも使われている知識なんだと感心しました。

こんなセールスコピーのテクニックをかなり細かく、しかもたくさん解説してくれている本ですが、一番関心を持ったのがボディーコピーの書き方でした。ボディーコピーはAmazonだと「商品の詳細」や「商品の説明」の箇所で、メルカリだと「商品の説明」の部分にあたります。この書き方、構成が大事だと解説しているのですが、その構成が「デザイン思考」と呼ばれる最近流行りの思考方法と似ているんです。

ちなみにデザイン思考というのは、これまで主流だった「ロジカルシンキング(論理的思考)」のあとに出てきた思考方法で、前例のない課題とか未知の問題と遭遇したときにベストな解を探すための方法で、環境変化の激しい時代だからこそ脚光を浴びています。

本書ではボディーコピーは「共感→問題提起→解決策の提案→ベネフィット→クロージング」と続くと書いていますが、この「共感~解決策の提案」までの流れがデジタル思考とまったく同じなんです。セールスコピーの場合は読み手の悩み(例えば、冬は寒くて散歩に行きたくなくなる、など)や価値観に共感しながら、『その気持ち、よく分かります』的なメッセージを文字にすることで読み手の『あっ、この人分かってくれてる!』と思ってもらいます。そして、この悩みの根本原因を解明して(自社の商品で)解決方法を提案する、、、という流れを文章にして語りかけるのが効果的なストーリーになるそうです。

実は私、デザイン思考はいまだによく理解できていません。論理的思考には自信があるので、その思考方法が染みついていて新しい手法に上書きできないみたいなんです。でも、セールスコピーなら「共感」もできそうな気がしているので、少しだけデザイン思考も身に付くかも、、、と淡い期待を寄せています。

とにかく、この「セールスコピー大全」は著者の成功事例だけでなく、心理学なども引き合いに出しながら分かり易く書かれています。アッという間に読める本なので、興味のある方は手に取ってみてはいかがでしょうか。