【FIREの日常】#98 阿万の春祭り(後編)

今回は引き続き阿万の春祭りの模様です。

前回は朝の準備の様子から海水浴場での15台のだんじり集合と八幡宮までを書きましたので、次は八幡宮に着いてから。
八幡宮の境内は結構広くて、15台のだんじりを停めておくのにも十分なスペースがあります。境内の外周をぐるりと囲むようにだんじりを並べて、動かないようにタイヤ留めを装着したらやっと休憩です。
20畳ほどある畳敷きの部屋に5つほどの地区の関係者が入って昼食や休憩をとっています。 数年前までは昼食のおにぎりを婦人部の人たちが手作りで握ってくれていたそうで、お米10升分(おにぎりにして約300個)とおでんのようなおかずも用意していました。でも最近は他人が握ったおにぎりを食べられない人が増え、お手伝いいただく人たちにも申し訳ないということで、今回はすべて業者に依頼して揃えました。

時刻は14時をまわってみんなへとへとになりながら、食事と休憩でエネルギー補給すること約1時間。いよいよ本日のメインとなる八幡宮への唄の奉納です。
海水浴場では時間短縮のため、3地区が同時に唄を歌っていたんですが、八幡さんでは一つの地区ずつ、参道の階段に横3人、縦6~7段くらいの人たちが並んで唄を披露します。観客も関係者や友人と思しき人たちが砂かぶりに30人ほど。その後ろを200人近くの人たちが4月にしては珍しいほどの強い日差しを避けながら木陰に入って各地区の演目を楽しんでいます。
一つの地区の演目は大体20分ほどで、これが15地区なので約5時間の長丁場です。まぁ、全部を観ている人は毎年YouTubeにこの祭りの模様をあげてくれている「道唄謙信」さんしかいないと思いますが、会場全体で300~500人ほどいた観光客の人たちも、自分の知人や応援している地区の唄だけをみて、あとは屋台巡りなどを楽しんでいました。

ちなみに屋台は30店以上が参道の両側に並びました。たこ焼き、イカ焼き、から揚げ、りんご飴など定番の食べ物や金魚すくい、輪投げ、射的など40年前から変わらないラインナップに加え、電球の中にサイダーが入った電球ソーダやサメ釣りなど見たこともないものも数多く並んでいました。ただ、最も驚いたのはほとんどのお店に「PayPay使えます」の案内が出ていたんです。これも時代の流れなんですかね。。。40年前、貯めておいたお小遣いの千円札をポケットに入れて落とさないように注意しながら熊野神社(西宮市にある小さな神社です)の人ごみの中を歩いたもんですが、今の子どもは親のスマホからからPayPayで千円分を送金してもらい、スマホ片手に残高を確認しながら屋台の買い物を楽しむんでしょうかね、、、
便利で安全だけど有難みが少し足りないような気がするのは年のせいかなぁ(・.・;)

で、15時過ぎに我が吹上町の唄の出番が来ました。唄の様子をご覧になりたい方はこちらのリンクをどうぞ。忠臣蔵の7段目を集まった200人くらいの観客の前で立派に堂々と歌い上げ、今年の春祭りのメインイベントは終わりました。
まだコロナの終息がぼんやりとしか見えていなかった2月に今年のお祭りの実施可否を自治会や祭礼団など関係者で喧々諤々議論し、これ以上期間をあけるとお祭りの継承が難しくなると半ば強引に参加しましたが、唄を終えた直後の大拍手と歓声を浴びた若者たちの顔を見ると、やってよかったぁ~と本心から思いました。

そこから他の地区の唄が2時間ほど続き、17時の時報(こっちでは17時に峠の我が家が流れます)を聴いたらいよいよ帰り支度なんですが、ここで2つ目の誤算が、、、雨が降り出しました。
天気予報でも夕方ごろから雨とはなっていたので、だんじりを覆うビニールカバーなどは抜かりなく準備していて、慌ててだんじりに詳しい60歳を超えたベテラン勢が4mもあるだんじりにのぼり、テキパキと河童をかけていきます。他の地区のだんじりも同様にビニールに包まれて無事に雨をしのぎましたが、ここでもタイムロス発生。

さらに悪いことに、この雨で参加者のテンションが上がってしまい、八幡宮からの退場が例年以上に時間がかかったのが3つ目の誤算。退場は八幡宮からの距離が遠い地区を先に出していくんですが、ここでまた「練る」んです。境内のあちこちをだんじりを引いて全力ダッシュ!しかも大体1地区20分くらい、最大で40分も練るところもあり、順番が後ろの方だった我が吹上は退場までにさらに2時間。八幡宮を出るころには辺りは夜のとばりが下りた19時をまわっていました。

みんなで雨に打たれながら道唄を唄いつつ、さらに2時間かけて吹上の街まで帰りました。 街に着いたのは21時をまわっていましたが、太鼓や道唄を聞きつけた近所の人たちがだんじりとそれを引く若人たちを観に沿道に出てきてくれました。そんな人たちも引き連れて、最後は朝に出発した地元のお寺さんまでだんじりを引き、地元の人たちの前で唄を披露しました。
疲れ切っているはずなのにわずかに残った気力と声を振り絞り、30~40人ほどの前で忠臣蔵を歌い上げました。

とりあえず、初めて参加した阿万の春祭りの長い長い1日が終わりました。
阿万は他の地域に比べて盛り上がるとは聞いていましたが、参加している人たちの意気込みや熱量は確かにすごいものです。だからこそ、来年以降はもっと多くの人に見てもらえるようにできないかなぁ、と温かい風呂に入りながらぼんやり考えた、そんな一日でした。