雑感:独占市場と自由市場

最近、近所の人たちから仕事を依頼されることが多くなってきました。特に、自治会やその関係者、そこで知り合った方々から依頼されることが増えていて、私でも地域の役に立てるんだと実感しています。でも、これは私が地域に完全に馴染んだ、ということではなく、単に周囲に代わりの人がいない状況だからだと考えています。今回は、経済学の話を交えながら、今の私の状況を分析してみたいと思います。

そもそも、経済学を齧ったことのある人であれば、独占市場と自由市場の話はミクロ経済学の最初の方に学ぶ内容で、私が中小企業診断士の勉強をしたテキストでは一番最初に掲載されていた記憶があります。

そして、独占状態は自由競争に比べて、企業にとっては利潤が大きくなり、その分だけ消費者の利潤は減る、と学びます。つまり、企業側は独占することを目指し、消費者や行政は(行き過ぎた)独占を排除しようとします。ざっくり言うと、これが独占市場と自由競争の説明になりますが、私が置かれている今の状況がまさしく独占状態だと考えられます。

例えば、3月に南あわじ市商工会に所属したんですが、会員に中小企業診断士は一人もいません。でも、商工会から診断士に斡旋している業務は結構あって、商工会が主催する経営相談は神戸から診断士に来てもらっているようです。そこに、地元で開業した私が会員登録したので、かなり好意的に受け止めてもらっています。会員登録した時期の関係で今年度の経営相談のスケジュールと相談員は既に決まっていたんですが、わざわざ新たに日数を増やして仕事を割り当ててくれました。

このように独占市場にいる場合、他と競合することがないので、自分で仕事を作る(例えば、地域の中小企業に補助金の申請を提案する「補助金ビジネス」など)ことをしなくても、地域で仕事が発生した場合、認知さえしてもらっていれば自然と話がまわってきます。

マーケティング用語では顧客の状態を「AIDA(Attention(注意)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Action(行動)」で表現しますが、独占状態だとAttentionに力を入れて周囲に認知さえしてもらえれば、そこからAction(行動)まではこちらで喚起する努力をあまり必要としません。今の自治会や地元の方々との関係が、この状態です。家の前の看板や自治会から仕事を受けたことが噂になることで、周囲に私の仕事やできること、依頼する内容などが十分知れ渡ってきています。

これもマーケティングの授業で学んだことですが昔も今もバイラルマーケティング、いわゆる口コミが最も強力で信頼されている広告だそうです。今の私のポジショニングは、周囲に競合が無かったことと、たまたま知り合った人たちが良い評判を拡散してくれている恩恵から生まれたもので、私個人の力量ではないのかもしれません。単に運が良かっただけで環境が変われば同じように上手くいく保証はどこにもありません。次はこのラッキーを長く活用できるように、信頼だけは損なわないようにしないといけませんね。

福沢諭吉さん『人望はもとより力量によりて得べきものにあらず、力量があれば人望が得られるものではない、誠実さによって、徐々に得られるものなのである。』

結構、好きな言葉です。