中小企業診断士のしごと

中小企業診断士の仕事って、何でしょうか?

中小企業庁によると「中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家」と定義されており、法律に基づいて経済産業大臣が登録することになっています。そして、その業務は、「中小企業者がその経営資源に関し適切な経営の診断及び経営に関する助言」とされています。また、役割は「企業の成長戦略の策定について専門的知識をもってアドバイス」することと、「策定した成長戦略を実行するに当たって具体的な経営計画を立て、その実績やその後の経営環境の変化を踏まえた支援も行います」となっています。

つまり、中小企業診断士は、経営の専門的知識を駆使して、企業と行政、企業と金融機関等のパイプ役、中小企業施策の適切な活用支援など、企業分野のコンサルタントとしてかなり幅広い活動分野を持っていることになります。また、この資格はコンサルタントを認定する唯一の国家資格として広く認知されています。

一方で、中小企業診断士は「足の裏の米粒」とも言われます。取っても食えない。。。

このように言われる背景の一つとして、診断士には独占業務が無いことが挙げられます。例えば、行政書士であれば許認可申請や権利義務関係、社労士であれば労働社会保険の関連業務などがありますが、診断士にはこのように「診断士以外の人がおこなうと罰則がある」といった独占業務がありません。要は、コンサルタントは資格が無くてももできる、ということであり、競合が多いため「取っても食えない資格だ」などと揶揄されています。

では、コンサルティングは誰にでもできるものでしょうか?

私見を言えば、誰でもできるものだと考えています。そもそも、コンサルティングは「企業の課題に対する解決策を示して成長をサポートする」という意味であり、その課題に深い知見を持っている人であれば、解決策をアドバイスすることは可能でしょう。だとすると、中小企業診断士の資格には価値がない、ということになってしまいますが、私は違うと考えています。なぜなら、この資格を持っている人の知識・知見の幅は相当広いのです。

診断士の1次試験は以下の7科目で、他の国家資格などと比べても科目ごとの関連性は低く、暗記科目だけでなく計算問題や時事問題までも含まれます。

≪中小企業診断士 1次試験科目≫

  1. 経済学・経済政策
  2. 財務・会計
  3. 企業経営理論
  4. 運営管理(オペレーション・マネジメント)
  5. 経営法務
  6. 経営情報システム
  7. 中小企業経営・中小企業政策

これだけ幅広い知識を求められている診断士は、特定の課題を解決するコンサルタントと違い、「経営課題解決のオールラウンダー」という位置付けなのでしょう。例えると、「この腹痛は虫垂炎(盲腸)だ!」と分かっている人は消化器内科の専門医に診てもらえばいいですが、「なんか最近お腹の調子が悪いなぁ」という不安を抱えているような人は、まず、かかりつけ医に相談して、その後の処置方法を一緒に検討するでしょう。

私は、中小企業診断士の役割はまさしく「企業のかかりつけ医」だと思っています。すでに経営課題が明確になっていて、その解決策が分からないという経営者はその分野の専門家や専門コンサルタントに相談される方がいいでしょう。恐らく、専門家ならではの知見を活かしたベストな解決策を提案してくれるでしょう。しかし、専門的な特定課題ではなく、単に「業績不振が続いているけど何故売れないのだろう」とか「なんとなく従業員と上手くいっていない気がする」、「今は順調だけど、このままでいいのかなぁ」のように日々の漠然とした不安や問題意識について一緒に考えられる人は、特定分野の専門コンサルタントではなく中小企業診断士だと思っていますし、そのために診断士は幅広い知識を身に付けているのでしょう。

私も中小企業の「かかりつけ医」になれるように、日々精進していきます。