雑感:マニュアル化の限界を感じた出来事

先日、ある人に誘われて神社に奉納するしめ縄つくりの様子を見てきました。私の住んでいる吹上町の何人かの住民が有志でおこなっているらしく、かれこれ100年以上もボランティアで続けているそうです。そこでは、90歳のお年寄りが60歳の若造?に熱心に縄の作り方や結い方を教えていて、その様子がとても微笑ましくて新鮮でした。なので、今回はしめ縄づくりを眺めていて感じたことを書いていきます。

私は5年ほど前に経営を学ぶために大学院に通いましたが、そこでは生産性向上やサービスの品質確保のためにマニュアル化に関する効能や効果について講義を受けました。大手と言われるコンビニや飲食店などではどの地域のお店に入っても安心できるサービスを提供するためにマニュアル化を徹底して、それも今から30年以上前から、私が大学生だった頃にお小遣い稼ぎで始めたコンビニのアルバイトもパスタ屋の厨房もことごとくマニュアル化されていました。そのおかげで、入店1日目はマニュアルを読んで覚えますが、2日目にはもうベテランの顔をして接客や調理ができるようになり、教育にかけるコストや時間を最小限に抑えるとても理に適った方法です。

ただ、今回のしめ縄づくりは経営学で学んだ生産性向上やマニュアル化と対極にありました。

そう、すべてが口伝えなんです。縄の作り方や結び方を方言を交えながら90歳の長老が説明し、それを聴きながら60歳の若手が実践する。当然のように最初は上手くいきません。
すると、次は1度だけ見本を見せます。この時の手さばきが実に見事で、熟練とはかくあるべし、、、を地でゆく凄さです。縄を作るシーンでは手のひらをこすり合わせるだけで間にある藁がスルスルと丈夫なロープに変身し、結ぶシーンでは指でしっかり握った縄をクルクルとあっちこっちに捻るだけでどんなに強い力でも解けない結びができるんです。ただ、あまりに見事過ぎて見ている側の60歳の人たちも一度では真似できずアンコールを要求したんですが、長老はそれには応えません。

そこで、こっそり
『なんでもう1回見せてあげないんですか?』
と聞いたら、
『何回も教えたら、考えないようになる。自分で考えないと覚えないよ!』とのこと。

正直、驚きました。

ちゃんと教育方針を持って指導にあたっていたんです。その後、自分たちで考えて試行錯誤しながらも無事にしめ縄ができあがると、その場にいた全員が満面の笑みを浮かべて、そのまま休憩時間になりました。

こんな光景を端で見ながら、フッと思ったのはマニュアル化へのしでした。

マニュアル化は効果的だし有効な手段であることに疑いの余地はないんだけど、それって短い時間軸での話なんではなかろうか???

5年や10年の業務であれば適宜マニュアルを見直すことで対応もできるけど、これを100年以上続けるとなると維持・管理する人が育たず、継続するのは難しいのかも、、、

でも、口伝えで指導することが前提だと、指導する側も自分で覚えるまで学習して成長しないといけないから、常に指導的立場の後継者が育っていると言えるよなぁ、、、

100年以上も続いている伝統ある行事や組織、企業にはマニュアルなんかは存在しないけど、今でもあらゆるものがしっかりと受け継がれていると聞くし、、、

もしかすると日本に100年以上続く会社が多い理由も、この辺りにあるのかも。。。

などなど、目の前の作業を通り過ぎて、しっかりと妄想の世界に入っていました(^_^;)

ちなみに世界で100年以上続く企業のうち、日本企業の占める割合は約4割、200年以上だと約65%が日本にあると言われていて、長寿は人間だけじゃない、世界に誇れる指標です。

企業の高齢化の秘訣も意外と身近なところにあるのかも、、、なんて感じた日曜の朝でした。。。