【FIREの日常】#114 近所の空き家事情

私が住んでいる南あわじ市の阿万地区でも空き家が目立ってきています。一方で、地域の空き家対策のプロジェクトメンバーでもあるため、空き家を探している、という話を耳にする機会も増えました。空き家はたくさんあって、借りたい人や売って欲しい人もそれなりに居るのに、なぜかマッチングが進まない、、、今回は私なりの少し斜めな見方で空き家対策について書いてみたいと思います。

まず空き家が増える事情ですが、そもそもその家に住まないから空き家になるわけで、住まない理由も大体分かっています。仕事がないんです。生きていくのに不自由のないお金を持っている人は住む場所を自由に選べますが、生活費を稼がなければならない人は、仕事のある地域の近くじゃないと住めません。なので、地方の主力産業である農業や漁業に人手が必要だった=仕事があった時は田舎にも一定数の人口がいて、その人たちの住む家も必要でした。

それが、機械化が進み作業人員が昔ほどいらなくなると仕事は都市部に集中し、それに伴い人口も都市部に流動する、いわゆる都市化問題が日本だけじゃなく世界中で起こることになりました。なので、仕事がない⇒人が集まらない⇒家はあっても住む人がいない⇒空き家が増える、という単純な図式だと考えられます。

次に、空き家を売りもせず、貸しもせず、そのままにしている(以後、放置と呼びます)事情ですが、これにはいくつか要因があるようです。よく耳にするのは、今さら田舎に戻って住むつもりはないけど、自分の代で手放すとご先祖様に申し訳が、、、という問題先送りパターン。
子供の頃に両親や祖父母と住んでいた思い出の家なので手放す決断ができない、、、なんとなく分かる気がします。また、親戚や昔の知り合いが今でもその地域で暮らしていて、その人たちから『家を手放すなんて、都会で苦労してるのかなぁ?』なんて噂されるのも嫌だし、、、って話も聞いたことがあります。
あとは、何と言っても建物があると固定資産税が安くなるので、将来的に住むことはないし、売るつもりも貸すつもりもないけど更地にして高い税金を払うくらいなら空き家にしてく、、、という人もいるようです。

と、様々な理由で空き家になって放置されている建物ですが、管理状況は両極端です。一つは売るつもりも貸すつもりもないのに、家への愛情やご近所さんの目があるのできっちりと手入れをする群とまったくのほったらかし状態のものです。特に、ほったらかしの建物は廃墟といっても過言ではないくらい荒んでいて、地域の美観を損ねるだけじゃなく、倒壊などで周囲の人や物に被害をおよぼす危険もあるくらいです。
メンテナンスしている家はそれなりに維持されていて、他人に迷惑をかけるレベルではないにせよ、やはり人が住んでいない家は傷むのも早いみたいで維持にかかる労力や費用は少しずつ増えているようです。

一方、借りたい人はどうかというと、最近はリタイヤ組だけじゃなく、30代くらいの家族も目立つようになりました。恐らく、リモートワークなど新しい働き方が広まったことで住む場所の選択肢が増えたことと、先行き不透明な時代の子育て方針として生きる力を養う(リベラルアーツ)環境が都会よりも田舎の方が整っていると感じているのだと想像できます。

こんな風に空き家を探している人はそれなりの数がいるのに、一向に解消されない理由ですが、実際に地域の空き家対策メンバーとして活動していて感じるのは、空き家情報が圧倒的に少ないことです。地域を歩けばそこら中に空き家はあるのに、売ったり貸したりできる物件がほとんどなく、買いたい借りたい人にとっては競争率がどんどん上がっていきます。だとすると、情報数を増やせばいいじゃないか、、、そうなんですが、これが結構難しい。

なぜなら、人間は必ずしも合理的に判断する生き物じゃないから(;_:)

これはマーケティングで真っ先に教わる前提条件みたいなものですが、空き家のケースも感情や世間体などが邪魔をして合理的に判断できていないようです。例えば、現状維持バイアス。人は変化を受け入れたくない、という心情があり、できるだけ今のままでいたいと思うものです。空き家を所有していたって、少しの固定資産税を払うことくらいなら我慢できるので、家の処分について頭を悩ます、、、といった煩わしいことは先延ばしにしたいものです。

また、家を売却したり賃貸するのはスイッチングコストが高いとも考えられます。スイッチングコストとは切り替えにかかる費用ということで、これは実際に負担する金銭的な価値だけじゃなく、手続きにかかる時間や労力、精神的負荷なども含まれます。身近な例だと、ひと昔前は携帯電話の通信会社を変えると番号も変わってしまうので、知り合いなどに連絡するのが面倒で通信会社をなかなか変えない、、、といったことが起こっていました。せっかく通信会社の免許を取りやすくして安いキャリアが誕生したのに、消費者は切替えを躊躇い競争にならない。これを憂いた総務省が競争を促すためにMNPという番号はそのままで会社だけを変更することを認めたので、今は番号はそのままで通信会社だけ変更することも可能になりました。

そして、家の売却や賃貸もスイッチングコストが高い、のです。相続の時に正しく登記が変更されていればいいですが、手続きを失念していた場合、下手をすると登記だけで数か月、100万円近くお金がかかることもあり、その後に売り先や借り手を見つけるなどを考えると、費やす時間や労力もなかなかのものです。

じゃあ、どうすればいいのか?何をすべきなのか?

今回はかなりの長文になってしまったので、続きは次回。今やろうとしていることについて書きたいと思います。